山形大学農学部で開かれる、山形在来作物研究会(以下「在作研」)のフォーラムに参加するため、鶴岡市に出かけた。私たちは、ちょうど1週間前の土曜日、11月6日に、[野菜の学校]で庄内野菜を取り上げたのだ。なぜか庄内づいているこの頃なのである。
[野菜の学校]にしても、在作研フォーラムにしても、庄内出身のTさんの熱の入れ方が違うのは当然のこと。山形県関係のヒトって(と一般化するのはキケンであることは承知しておりますが)、すごく郷土愛が深く、熱いね。
在作研フォーラムは、13日の午後。私たち電車組はちょうどそれに間に合うように到着するつもりだった。が、フライト組のTさんは朝早く着いてしまうので、午後のフォーラム開始までなにかできないかと。で、電車組に電話が入った。
「もしかしたら、小真木(こまぎ)大根を見に行けるかも。行く?」
もちろん、行く!
1週間前の[野菜の学校]のときは間に合わなかった小真木大根の生産農家の方が、そのときは家にいるので、見に来てもよい、と言っているらしい。「らしい」でも、「みたい」でも、とにかく電車は変更しなくちゃ。
ということは、東京駅朝6時発ですよ。帰りは翌日の22時30分くらいに東京着。今回も強行軍である。
小真木大根は鶴岡市小真木地区で作られている伝統野菜。山形大学の江頭宏昌先生がご紹介くださった、太田孝二さんの奥さまと待ち合わせた。神社の鳥居の前で待っていれば、来てくれるというのだが、ゆっくり待つことに慣れてない都会の住民は、近くにいた人に太田さんのおうちを聞いて歩き出した。すると、通りを隔てた家の軒に、細い大根がぶら下がっているではないか。
あれだ!小真木大根が干してある!
写真を撮った。通りを隔てて2、3カット。左右をよくみて車道を渡り、家のそばまで行って、2、3カット。
そうこうしているうちに、ネッカチーフを頭にかぶった女性が、忽然と通りに出現した。
あ、あの人かな? あの人かも、 あの人のような…。
[野菜の学校]の試料のことで、何度も電話でやりとりしていたTさんにはわかるらしい。
小真木大根の畑は、通りからちょっと入ったところにあった。昔は細い農道だったが、何軒かの農家が土地を提供して車が通れるような道にしたのだそうだ。今年の異常気象のせいで、全体に生育が悪いという。それでも育たなかった畝は1つだけ。と、1本引き抜いて見せてくれた。まだ小さい。30~40㎝くらいになったら収穫するのだという。
小さくても小真木大根煮は違いない。写真を撮らせてもらった。さて、帰ろうというときになって判明した。太田さんちは、さっき撮影した、小真木大根が下がっていたあのおうちだった! グーゼンというか、まああって不思議ではない話なのであるが、ハイになってるわれわれは、ここで大騒ぎになってしまった。
それを見ていた太田さんの奥さん。「そうか、じゃあ、持っていきな」と、2階に上がって行った。
カチカチになるまで干して、はりはり漬けにするのだそうだ。葉っぱは、いますぐ使ったほうがいい。洗って「けんちんにする」と教わった。ごま油で炒めて調味するだけでもいいし、いろんな野菜がたくさん入るけんちん汁にしてもいい。うん、やってみよう。
後で、江頭先生に、小真木大根の畑を見に行ったこと、太田さんの奥さまにお目にかかったことを報告した。すると、「あのお宅は、ただちゃ豆の名前の由来になった、だだちゃの子孫ですよ」と。こりゃまた大騒ぎだ。